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はたらく人・学生のメンタルクリニック

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注意欠如多動症/注意欠陥多動性障害(ADHD)

注意欠如多動症/注意欠陥多動性障害(ADHD)を具体的な例を交えて詳しくご説明します。

注意欠如多動症/注意欠陥多動性障害(ADHD)のケース 患者さんの例
ケース1 Aさん 33歳 男性 会社員

 Aさんは33歳の男性です。子どもの頃は卒業式などじっと座っていないといけないときに、じっとしていられずによく体が左右に揺れてしまうことがありました。先生の質問に早とちりして出し抜けに答えを言ってしまうこともありました。通知簿には、積極的で活発なところがいいところですが、気が散りやすいので注意しましょうと書かれたことがありました。テストでは問題文の読み間違いや選択肢の選び間違いがしばしばありましたが、基本的には成績は悪くなく4年制大学を卒業するまでは特に学業や日常生活に苦労することはありませんでした。

 大学を卒業後は一般企業の営業職として入社をしました。お客様との予定を何度か忘れてしまうなどがありましたが、メモ帳を活用するなどしてなんとかやってきました。昔から交通渋滞にひどくイライラしてしまうところがあり、車で移動する営業はちょっと大変だとは思いつつ、やりがいがある仕事なので一生懸命がんばっていました。

 この度、係長に昇進し、自分の営業のことをしつつ、部下の面倒も見ないといけなくなり業務が倍増しました。その頃より、予定の管理などが把握しきれなくなり、業務のツメの甘さが目立ち、ミスを連発するようになりました。徐々に気分が落ち込んで、眠れなくなってきたため、いつもの自分ではないことを自覚したため精神科クリニックを受診しました。

 診断の結果、注意欠如多動症(ADHD)が原因の適応障害であると診断され、まずは気分の落ち込みと不眠の治療を開始されました。その後、徐々に落ち着きを取り戻せたため、注意欠如多動症(ADHD)の治療が開始されました。不注意が目立っていたため、仕事でどういった予定の管理が苦手なのか主治医と相談し、大雑把に予定をメモするためすべきことがわからなくなるなど、問題点に気づくことが出来ました。また、内服を同時に始め、徐々に不注意が減っていきました。今では、日常での工夫をうまく出来るようになり、仕事も問題なくこなせています。

ケース2 Bさん 26歳 女性 会社員

 Bさんは26歳の女性です。子どもの頃はおてんばと言われ、小学校の頃はよく怪我をして帰って来ることが多いでした。我慢をして待つことが苦手で、よく母親に怒られていましたが、おしゃべりで何でも話をするため両親との関係は良好でした。一方で、宿題を最後までやり遂げるのが苦手で、学校の成績も中の下程度で「自分はあまり優れた人間ではない」とずっと思っていたようでした。惚れっぽい部分があったため、大学に入ってから不用意に異性関係を持ち一度人工妊娠中絶をしています。

 大学卒業後は一般事務として一般企業に就職をし、一人暮らしを始めました。当時の彼氏からは部屋が散らかりすぎて女の子の部屋とは思えないと言われたことがあるようです。24歳の時に妊娠が分かったことを理由に当時付き合っていた人と結婚をしました。出産後は職場に復帰しましたが、家庭のことをしつつ仕事をすることに手が回らなくなり、会社の書類をなくす、役所への児童手当の書類を出し忘れるなどトラブルが頻発するようになりました。自信をなくした>Bさんは、家庭と仕事が両立できない理由がなにかあるのかとインターネットで検索したところ注意欠如多動症(ADHD)の存在を知りました。

 近くのメンタルクリニックで、注意欠如多動症(ADHD)と診断されました。内服の治療が始まり、同時に行動療法が開始されました。まずは口約束を記憶に頼って覚えようとせずすぐさまメモをとる、メモの内容は走り書きではなく関わった人物や場所や時間や締め切りをきちんと書き留めておくなど、やるべきことについての対応方を身につける練習を繰り返しました。薬物療法と行動療法の効果があり今ではミスややり忘れが減り、Bさんは毎日楽しく過ごしているようです。

診断基準の要約(DSM-5より)

不注意もしくは多動性・衝動性が下記のいずれかの項目で17歳以下では6つ以上、17歳以上では5つ以上当てはまることが診断基準です。不注意もしくは多動性・衝動性は12歳以前にもいくつかが存在していないといけません。それは例えば、子供のころはなにも問題はなかったが20歳になってから不注意が出てきたというものはADHDとは言えないということです。
診断は出来ませんがネットでの簡易チェックも出来ますので、こちらもご利用ください。
http://adhd.co.jp/otona/

不注意
多動性・衝動性
  1. a.手足をそわそわと動かしたり、またはいすの上でもじもじする
  2. b.席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる(例:仕事場などそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)
  3. c.不適切な状況でよく走り回ったり高い所へ登ったりする(注:大人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)
  4. d.静かに遊んだり余暇活動につくことがよくできない
  5. e.よく“じっとしていない”またはまるで“エンジンで動かされているように”行動する(例:同じところに長時間とどまることができないかまたは不快に感じる。)
  6. f.よくおしゃべりである
  7. g.よく質問が終わる前に口をはさんで答えてしまう(例:他の人たちの言葉の続きを言ってしまう:会話で自分の番を待つことが出来ない)
  8. h.よく順番を待つことが困難である
  9. i.よく他人の邪魔をする(例:会話、ゲームまたは活動に干渉する。:相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始める。:大人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りする)
原因は?

生まれつきの脳の特性であることが知られています

 原因は特定されていませんが、様々な原因が関与していると考えられています。脳の形態的な問題からは前頭葉、大脳基底核、小脳虫部、の容積の減少が指摘されています。
 神経伝達物質の機能異常も指摘されており、ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系の活動の低下が指摘されています。そのため、ドパミンやノルアドレナリンに作用する治療薬がADHDの治療薬として用いられています。
 遺伝の関与も多数データがあり、一卵性双生児の研究では兄弟間で片方がADHDならもう片方もADHDであるリスクは11-18倍であると言われています。いずれにせよ、原因は育て方の問題ではなく元々から生まれ持った脳の機能的特徴と言えます。

治療は?

自分の特性を知って、上手に自分を取り扱えるようになることが大事です

 治療は行動療法と薬物療法になります。行動療法は医療・心理だけではなく、育てるという要素も含まれています。「学習理論に基づいて、間違った学習の解除や、適応できる行動の再学習を行う手法」です。大人になってくると子どもの頃の失敗が積み重なり自信の獲得が出来なかった人も多数含まれるため、否定的な自己評価にも注目し認知行動療法が行われます。
 ADHDは複数の業務を同時にこなすのが苦手といわれています。的確な優先順位をたて順序だてて業務を行うのが苦手な傾向がありますし、それぞれの業務が中途半端になりやすく、ケアレスミスにも繋がります。例えば、職人として1つの業務に打ち込むことはお勧めできる一方で、職人として同じ業務内容であっても複数の契約先と契約を同時に結んでしまうと処理しきれなくなる可能性があります。デザイナーであれば、1つの依頼を終えてから他の依頼に取り掛かることは容易に出来ても、同時に複数の依頼を受けてしまうと処理しきれなくなるといった具合です。働き方1つに関してもその方の状態を考えつつ現状で一番良い選択肢探していく必要があると考えられます。

 ADHD症状は単一の原因ではなく薬物療法だけでは症状が完全に消えるわけではありませんが、神経伝達物質の機能異常の部分は薬物療法で対応することで改善が期待されます。薬物療法は自転車で言うと補助輪といわれています。
 上手にADHD症状とうまく付き合えるまでは内服のサポートを使いつつ、ADHDの症状で困ることが減ってくれば減量・中止をしていけばよいのです。逆に、薬を使用することで上手に制御できるようになるまでの期間が短くなる可能性が十分にあります。そのため、内服治療で改善する場合は薬物療法も有効だと考えています。内服が有効な可能性は60-80%といわれています。薬物療法を行って効果がなかったからといって、ADHDではないということはいえません。

ADHD 忘れ物対策

当院では企業内や教育現場を見てきた経験から、企業内や教育現場で起こしやすいトラブルに注目し、働く人と学生のADHDの治療を行っております。例えば、チェックリストがあっても確認ミスが生じてしまう人は、1つ1つチェックしているのではなく一気にすべてを確認して一気にすべてのチェックリストに[レ]をつけていく傾向があります。そのような業務中に起こりやすい問題を抽出出来るのは、精神科医と専属産業医の経験からの目線であると考えております。仕事や学業でミスを繰り返す人、人と同じことが出来ない人、ミスを繰り返したためにメンタル不調に陥っている人は是非ご相談ください。