会社の外で患者さんを診ている精神科医 × 会社の中から労働者を見る産業医
だから、その人全体を見ることができます。

はたらく人・学生のメンタルクリニック

P1 P2 P3 P4 P1 P2 P3 P4

うつ病

うつ病を具体的な例を交えて詳しくご説明します。

原因は?

生物学的要因

 生物学的要因としては古くはモノアミン仮説にさかのぼります。モノアミンはセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンを指します。1950年代に抗精神病薬の開発中に、うつ病に効果がある薬剤が発見されこれが細胞間隙のセロトニン・ノルアドレナリンを増加させることがわりました。これがうつ病が気持ちの問題ではなく、生物学的な問題であることが発見された瞬間です。
 以後、うつ病の研究としてモノアミン仮説以外にも視床下部―下垂体―副腎系の関与、グルタミン酸系の関与、脳由来神経栄養因子BDNFの減少、炎症性サイトカインが増加など生物学的にいくつもの研究が進められてきました。
 現在のうつ病の薬物療法は、これらの生物学的な証明の結果に基づいて確立されてきたものといえます。

環境要因

 ストレスの原因となる出来事は、うつ病を引き起こす因子としてよく知られています。また子どもの頃の劣悪な環境は、将来うつ病を発症する危険因子といわれています。
 一方で内因性(外からの心理学的要因によらず、自分の中から生じてくる)のうつ病も知られており、うつ病の発症に必ずしもストレスが存在するわけではありません。これといったストレスがない人にもうつ病はおこりうるのです。

性格要因

 うつ病は真面目で自責的でルールを重んじる性格の人がなりやすいといわれてきました。一方でいわゆる新型うつ病と称される「逃避型抑うつ」(広瀬)、「現代型うつ病」(松浪ら)、「未熟型うつ病」(阿部ら)、「ディスチミア親和型」(樽味)など従来のうつ病と言われてきたものでは理解が出来ない状態が認められるようになってきています。
 1つ1つ微妙に違うものの未熟で自己愛的で他罰的とも言われる傾向があるようです。古くからよく知られている気分障害の病前性格としては循環気質(クレッチマー)、執着気質(下田)、メランコリー型(テレンバッハ)があります。
 いずれにしろうつ病には特定された1つの性格傾向ではないにしても、いくつかのうつ病になりやすい性格傾向があると考えられます。ストレスのかかる出来事とうつ病の関係性は強い関係性があります。その中でもストレスに対する弱さとしての性格傾向は、うつ病を考えていく上で無視できない要素といえるでしょう。

遺伝要因

 うつ病は遺伝因子の関与は大きくないとされています。躁うつ病をもつ成人の親族は、躁うつ病を発症する危険性は平均10倍高く、近親になるほど危険性が上がるといわれています。一方でうつ病は近親である第一度親族(本人の両親、兄弟姉妹、子供)間での危険性は2〜4倍といわれています。このことより躁うつ病に比べ遺伝性が弱いという結果がわかります。
 遺伝的な気質の部分で神経症的(心配症で否定的な感情が強い)な性格特性をもつ人はなりやすいと考えられています。また、Caspiらの報告でストレスが多いとうつ病になりやすい遺伝子を持つ人がいるということも報告されています。
 うつ病が家族内で発症するのは家族内で同様のストレスにさらされているからという見解もあり、いずれにせよ遺伝子だけでうつ病の原因を証明できるわけではありません。

症状は?

診断基準にある9つの症状以外に、不安や身体症状がでる人もいます。

 身体症状としては、胃腸の調子が悪くなったり、頭痛がしたり、動悸がしたり、呼吸がしにくい感じがしたりする人がいます。身体症状が主な症状としてうつ状態が目立たないうつ病を仮面うつ病と言います。
 気分が落ち込む人の中には、気分がすぐれないのでイライラするという感情が出る人もいます。不眠はほぼ必須の症状で、不眠をうつ病などの精神疾患のサインとしてメンタル問題の早期発見に取り組む自治体の話は専門家の中ではとても有名です。
 症状のひどい人は微小妄想が出る場合があります。微小妄想とは自分を過小評価してしまう妄想です。微小妄想は代表的な3つの妄想に分けることができます。
 自分の経済的なことに関して過小評価し「貧乏で破産してしまう」と思ってしまう貧困妄想、自分の社会的立場に関して過小評価し「自分の存在が罪であり、罰せられ捕らえられるべきだ」と思ってしまう罪業妄想、自分の健康を過小評価し「癌などの重病にかかっており、もう治らない」と思ってしまう心気妄想があります。これらの妄想は3つのうち1つしか出ない場合もありますし、複数同時に出る場合もあります。

うつ病