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はたらく人・学生のメンタルクリニック

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パニック障害/パニック症

パニック障害/パニック症を具体的な例を交えて詳しくご説明します。

患者さんの例 Aさん 25歳 女性

 Aさんは電車通勤をしている途中で急に心臓がドキドキし、息苦しさを感じふらついて立っていられなくなりました。途中下車をして、しばらく休んでいると 良くなりました。数日後、ショッピングセンターで買い物をしているときにも同じ症状が出現し、このまま死んでしまうのではないかと怖くなりました。
 それ以来、外出して同じ症状が出たらどうしようと思うようになってしまい、家の外にあまり出れなくなってしまいました。職場にもなんとか頑張っていくも のの、いつ再び同じ症状が起こるかが不安になり仕事も手につかず、申し訳なくなって気分が落ち込んで眠れなくなってしまうようになりました。家族に相談し たところ、精神科の受診を勧められてメンタルクリニックに受診しました。



 受診をしたところ、パニック障害という診断を受けました。抗うつ薬と抗不安薬での治療を受けました。また、パニック障害でおこる発作はパニック発作といい、パニック発作で死ぬことはないという説明を受けました。パニック発作が起きたときは抗不安薬を使用することでパニック発作がおさまることを体験することが出来、抗不安薬を持っておくことで安心して外に出れるようになりました。併せて行動療法を行い、一気に行動しようとせず徐々に外出することを慣らしていき自信を取り戻すことが大事だと説明を受けました。


 外出することにすっかり自信をなくしていたAさんでしたが、少しずつ家の周り から散歩することをはじめ、徐々に自信を取り戻し、今では普段どおりに生活が出来るようになりました。

診断基準
A.繰り返される予期しないパニック発作。

 パニック発作とは、突然激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こる。
注:突然の高まりは,平穏状態,または不安状態から起こりうる。

  1. 動悸,心悸亢進,または心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震いまたは震え
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部の不快感
  7. 吐気または腹部の不快感
  8. めまい感,ふらつく感じ,頭が軽くなる感じ,または気が遠くなる感じ
  9. 寒気または熱感
  10. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  11. 現実感消失(現実ではない感じ),または離人感(自分自身から離脱している)
  12. 抑制力を失うことに対する恐怖
  13. 死ぬことに対する恐怖
B.発作のうち少なくとも1つは、以下に述べる1つまたは両者が1カ月(またはそれ以上)続いている。
  1. さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念または心配(例:抑制力を失う、心臓発作が起こる、”どうかなってしまう”)
  2. 発作に関連した行動の意味のある不適応的変化(例:運動や不慣れな状況を回避するといった,パニック発作を避けるような行動)
C.その障害は,物質の生理学的作用(例:乱用薬物,医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進,心肺疾患)によるものでない.
D.その障害は,他の精神疾患によってうまく説明されない。
  1. パニック発作が生じる状況は、社交不安症の場合のように恐怖する社交的状況に反応して生じたものではない。
  2. 限局性恐怖症のように,限定された恐怖対象または状況に反応して生じたものではない
  3. 強迫症のように,強迫観念に反応して生じたものではない
  4. 心的外傷後ストレス障害のように,外傷的出来事を想起させるものに反応して生じたものではない
  5. 分離不安症のように,愛着対象からの分離に反応して生じたものではない
どういった症状が出るのか

「心臓がドキドキして、息が苦しくなる」というのが代表的



 診断基準に書かれているようなパニック発作という症状が出ます。その中でも心臓がドキドキする(動悸)ことが一番多いといわれています。息ができない感じ(呼吸困難)や、めまい、ふらつきを訴える方も多いです。
 また、パニック障害では前触れもなくいきなりパニック発作が出現するため、いつどこでパニック発作が起こるかわからないというのが不安になります。これを予期不安といいます。
 そして、外に出られなくなったり、家の近所しか行動できなくなったり、エレベーターや電車など一度入ったらしばらく逃げられない状況を回避するようになります。このような状況を恐怖に思うことを広場恐怖といいます。

パニック障害/パニック症の主な症状(診断基準より抜粋)
  1. 動悸,心悸亢進,または心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震いまたは震え
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部の不快感
  7. 吐気または腹部の不快感
  8. めまい感,ふらつく感じ,頭が軽くなる感じ,または気が遠くなる感じ
  9. 寒気または熱感
  10. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  11. 現実感消失(現実ではない感じ),または離人感(自分自身から離脱している)
  12. 抑制力を失うことに対する恐怖
  13. 死ぬことに対する恐怖
原因は?

身体的な原因、心理的な原因、環境的な原因などが組み合わさっている

 身体的な原因としては、脳幹の青班核、大脳辺縁系、前頭前皮質の異常などが研究により指摘されています。一般的に体質と表現しても大きくはずれた説明ではないと思います。これにより性格の問題であるという疾患ではないことがお分かりいただけるでしょう。また、二酸化炭素、乳酸ナトリウム、重炭酸塩などを吸い込むと誘発されるというのも生物学的な疾患であることの裏づけになります。神経伝達物質では主にセロトニン系機能障害が指摘されています。
 心理的な原因としては、怒りに対する耐性が低いことなどが挙げられています。この部分に関しては本人の心理特性によるものと言えそうです。しかし、視点を変えると自分自身で対応可能であることでもあり、医療機関に頼りっきりではなく自分自身でも対応していくことが可能な部分がある疾患であるともいえます。
 環境的な原因としては、子供の頃の親との死別や、子供の頃の虐待があると、その後パニック障害を起こす確率が高いという研究があります。

パニック発作が出る=パニック障害、ではない。

別の疾患でもパニック発作は出るので要注意

 パニック発作はパニック症だけでなく、多くの精神疾患(不安症/不安障害、うつ病、躁うつ病、強迫症/強迫性障害、パーソナリティ障害、等)で認められます。
 パニック発作には予期されるパニック発作と予期されないパニック発作があります。予期されるパニック発作は、あるストレスにさらされることで発作が起こるというのが予期されるということです。学校や働く現場では、過去に人間関係上のトラブルがあった人物と出会うとパニック発作が出現することが多いように思われます。他にも、仕事や課題に追われると出る人もいます。
 診断基準にもあるように予期しないパニック発作を繰り返すことがパニック障害の特徴です。リラックスしているときや、夜に寝ているときにも突然起こります。特定の状況で(予期されるパニック発作)のみ起こる場合は、別の疾患が考えられます。予期しないパニック発作と予期されるパニック発作が両方起こる方はパニック障害の可能性が考えられます。

治療は?

薬物療法と精神療法を組み合わせて早めの改善を

  1. 薬物療法[抗うつ薬、SSRI]

     原因のところでパニック障害には身体的な原因があるとお伝えしました。治療薬としてはセロトニンに対する薬剤を使用されます。パニック障害を含め不安障害と呼ばれている一群には、SSRIというセロトニンに作用する抗うつ薬が効きます。SSRIの効果は早い人であれば1〜2週間ほどで出てきます。最初の量は副作用が出来るだけでにくい少しの量から始めますので、十分な量まで少しずつ増やしていく場合もしばしばあります。副作用は、飲み始めた頃に胃の不快感、下痢などの胃腸症状が出現することがあります。これらのお腹の症状は数日すると消えてくることがほとんどなので、少しくらいの違和感程度であれば飲み続けていただいても大丈夫です。ごくまれに動悸や興奮・混乱などが見られる場合があるので、困ったときは主治医に相談しましょう。
     また、SSRIは量が増えた後に減らす場合は徐々に減らしていく必要がある薬剤です。急にやめてしまうと離脱症状という反動が起こってしまうからです。やめる場合も必ず主治医に相談しましょう。
     ベンゾジアゼピン系抗不安薬に比べて速効性は劣るものの精神依存を認めないため、比較的安全性が高く治療の基本になることが多いお薬です。
     一般的にパニック障害の治療は約1年といわれています。一方で生物学的な原因があるため、個人差があり症状が続くため治療を継続される方もいます。当院では患者様ときちんと相談し必要でなくなればきちんと薬を減量・中止していくよう心がけています。

  2. 薬物療法[抗不安薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬)]

     30分ほどで効果が出ることが多く速効性があります。一方で長期間何度も使っていると精神依存と離脱症状を引き起こすことがあります。そのためベンゾジアゼピンは精神科の治療には非常に有効な薬ですが、安易に漫然と使用する薬ではありません。「精神科の薬は一度飲むとやめられない」と噂される原因となっている薬です。そのため、抗うつ薬が効いてくるまでの間や急な発作が起こったときに使われることが多いです。症状が強いときには毎日飲んだりすることもありますが、症状が良くなってくれば減らしていくべきお薬です。使用する量が多いほど薬を減量するのに時間がかかります。
     パニック発作ではアルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)が使用されることが多いです。その他の不安には、症状にあわせて薬剤が使用されます。
     副作用としては、眠気、ふらつき、筋力低下があります。これらは薬が体から抜けると消えるものなので、短いものであれば数時間、長いものでも2〜3日すれば改善されます。GABAという体の興奮を抑える神経系に作用するので、不安・緊張感が緩和されるとともに眠気や筋肉のゆるみが出ると理解して頂いてかまいません。
     当院ではベンゾジアゼピン依存が起こらないように、出来る限り必要最低限の量での治療を心がけています。

  3. 精神療法



     いくつか精神療法がありますが、主に認知療法や行動療法が行われます。
     認知療法は考え方をバランスよくし、柔軟性を持たせる心理療法といわれています。パニック発作に関しては、不安のため些細な体の変化も重大なことと思ってしまう思考を変化させ、パニック発作は命に関わるものではないことを理解することがポイントだといわれています。
     行動療法は暴露法(エクスポージャー法)といって、例えば予期不安のため電車に乗るのが不安になってしまった人に対して、駅に近づく、ホームの中に入る、一駅だけ乗るなど徐々に不安の対象に近づいていく方法がとられます。
     当院では患者様個人個人にあった精神療法を考え、無理のない範囲からサポートしていくことが大切であると考えています。

緊急時(診察時間外)

大阪府では夜間・休日に、精神疾患を有する方やその御家族様などから、緊急時にお電話いただければ、必要に応じて精神科救急医療機関の利用についてご案内するというシステムがあります。
電話番号:0570-01-5000
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