うつ病を具体的な例を交えて詳しくご説明します。
うつ病の患者さんの例
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Aさん 33歳 女性 出版社勤務
Aさんは33歳の女性です。元々内気で真面目な性格で、人に相談するくらいなら残業してでも自分1人で全部の仕事を済ませてしまう人でした。出版社に勤めており、会社では営業部に所属をしており、真面目な性格からマメに訪問するため取引先からは信頼されていました。
半年前に部署の方針が大きく変わり、編集部がやっていたセミナー企画を営業部で受け持つように言われました。最初はなんとか慣れようと頑張ったのですが、Aさんは企画を立てることが苦手であったためセミナー企画の業務が足を引っ張り後輩たちにどんどん営業成績が抜かれていきました。
3ヶ月前より、休みの日にも仕事のことが頭から離れなくなり、夜もろくに眠ることが出来なくなりました。理由もないのに涙が出てきて食事ものどを通らなくなり、次第に仕事への興味も低下していきました。
朝起きても全身の疲れが残っているように感じ、「もう私なんてダメ、いなくなった方がいい。」と言い出したため心配した母に連れられ精神科クリニックを受診しました。
診察の結果、うつ病と診断され精神療法と薬物療法と環境調整を行っていくことになりました。主治医はAさんの状態が、強いうつ状態であったため会社の産業医に手紙を書き、社内でのサポート体制が作れるように産業医との連携を行いました。
産業医はAさんの了承を得て上司と面談を行い、上司にうつ状態であることを説明しました。面談の結果、企画業務に慣れていくまでの間、業務量の調整が行われるようになりました。会社の中で理解してもらえる人が出来たのでAさんは少し安心しました。
また、ある考え方のクセがAさん自身を追い込んでいると考えた主治医は、精神療法として認知行動療法が開始しました。Aさんは真面目な反面、乗り越えられないのは頑張りが足りないせいであるという考え方のクセがあり、乗り越えられないことがある自分はダメな人間である責めていました。
認知行動療法で徐々に考え方のクセが改善され、6か月後には人には得意不得意があり時には乗り越えるのが困難なこともあってよく、沢山のことを乗り越えてきた自分は決してダメな人間ではないと思えるようになりました。また、抗うつ薬を飲み始めてから少しずつ気分の落ち着きを取り戻すことが出来るようになりました。
治療を開始して10か月、Aさんはうつ状態はすっかり良くなり徐々に仕事にも慣れて会社で再び活躍できるようになりました。
うつ病の診断基準の要約
- 右記の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病気以前の機能からの変化を起こしている。
これらの症状のうち少なくともひとつは、(1)抑うつ気分、あるいは(2)興味または喜びの喪失である。 -
- (1)抑うつ気分
- (2)興味または喜びの著しい減退
- (3)体重減少(or 増加)、または食欲の減退(or 増加)
- (4)不眠(or 睡眠過多)
- (5)焦燥(今にも何かしでかしそう)または制止(思考や言動が遅くなる)
- (6)易疲労性や気力の減退
- (7)無価値感や罪責感:「自分をちっぽけと思う」
- (8)集中力の減退や決断困難
- (9)希死念慮:「死にたい、消えてしまいたい」
うつ病の症状は?
診断基準にある9つの症状以外に、
不安や身体症状がでる人もいます。
身体症状としては、胃腸の調子が悪くなったり、頭痛がしたり、動悸がしたり、呼吸がしにくい感じがしたりする人がいます。身体症状が主な症状としてうつ状態が目立たないうつ病を仮面うつ病と言います。
気分が落ち込む人の中には、気分がすぐれないのでイライラするという感情が出る人もいます。不眠はほぼ必須の症状で、不眠をうつ病などの精神疾患のサインとしてメンタル問題の早期発見に取り組む自治体の話は専門家の中ではとても有名です。
症状のひどい人は微小妄想が出る場合があります。微小妄想とは自分を過小評価してしまう妄想です。微小妄想は代表的な3つの妄想に分けることができます。
自分の経済的なことに関して過小評価し「貧乏で破産してしまう」と思ってしまう貧困妄想、自分の社会的立場に関して過小評価し「自分の存在が罪であり、罰せられ捕らえられるべきだ」と思ってしまう罪業妄想、自分の健康を過小評価し「癌などの重病にかかっており、もう治らない」と思ってしまう心気妄想があります。これらの妄想は3つのうち1つしか出ない場合もありますし、複数同時に出る場合もあります。
うつ病の治療は?
治療は精神療法と環境調整と薬物療法になります。
本人の心理的要因が強い場合は精神療法が必要でしょうし、環境因子が関わってくる場合は環境調整が必要でしょうし、脳科学的な問題が強い場合は薬物療法が必要でしょう。ただ原因のところでもお伝えしたようにうつ病は様々な因子が絡んで起こる病気なので、それぞれ組み合わせて治療を行うことが一般的です。
- 精神療法
- 環境調整
- 薬物療法
- 精神療法
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様々な精神療法が適応になりますが、有名なものとしては支持的精神療法や認知行動療法があります。考え方のクセ(スキーマといいます)に気づき、その考え方のクセを生活上バランスの良い方向にしていくことが行われます。
- 環境調整
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原因となった環境へのアプローチを一緒に考えていきます。当院では特に会社の内部や、学校の内部のことを熟知した医師が対応しますので、産業医との連携や、スクールカウンセラーとの連携がより踏み込んだところまで行うことが可能です。
- 薬物療法
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抗うつ薬の他、抗不安薬や睡眠薬を使用します。当院では、不要な処方は行わないように心がけており、精神症状の改善が認められれば状態をきちんと把握したうえですみやかな薬剤の減量・中止をするようにしています。また、就労者や学生という状況も考慮し、出来るだけ自宅にいる朝夕の内服で治療が可能なように相談を行います。また、仕事や学業に支障が出ないように、記憶や思考を抑える処方を避けるように処方を考えています。
大阪府では夜間・休日に、精神疾患を有する方やその御家族様などから、緊急時にお電話いただければ、必要に応じて精神科救急医療機関の利用についてご案内するというシステムがあります。
電話番号:0570-01-5000
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