はたらく人・学生のメンタルクリニック

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症状・障害

自閉スペクトラム症(ASD)

自閉スペクトラム症(ASD)を具体的な例を交えて詳しくご説明します。

自閉スペクトラム症(ASD)の患者さんの例

  • Aさん 29歳 男性 会社員

Aさんは29歳の男性です。学生の頃から一人で黙々と作業することは得意でしたが、複数人で雑談をしたり、その場の空気を読んで振る舞ったりすることは苦手でした。相手が冗談で言っているのか、本気で言っているのかが分からず戸惑うこともありました。

就職後は、担当業務そのものはよく出来ていたものの、職場で困りごとが増えてきました。口頭で曖昧に指示されると何をどこまでやればよいのか分からず、確認をすると「それくらい察して」と言われてしまいます。急な予定変更があると頭の切り替えが難しく、強いストレスを感じてしまいました。また、会議では発言のタイミングが分からず、逆に自分が必要だと思ったことを率直に伝えると「言い方がきつい」と受け取られることもありました。

こうしたことが重なるうちに、Aさんは「自分は社会人としておかしいのではないか」と悩むようになりました。仕事の後はひどく疲れ、家では何も出来ず、眠れない日も増えていきました。気分の落ち込みも出てきたため、精神科を受診しました。

診察では、幼少期から続いていた対人コミュニケーションの苦手さや、予定変更への弱さ、感覚の敏感さ、興味の偏りなどを整理し、自閉スペクトラム症(ASD)の特性が背景にあると考えられました。Aさんはこれまで自分の困りごとを「性格が悪いから」「努力不足だから」と思って責めていましたが、特性として理解することで少し安心しました。

その後は、曖昧な指示を減らして文章でやり取りをする、予定変更は早めに共有してもらう、疲れがたまりやすい場面を把握するなどの工夫を行いました。必要に応じて不眠や不安への治療も行い、Aさんは徐々に働きやすさを取り戻していきました。

自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準の要約

A.対人関係やコミュニケーションにおいて、持続的な苦手さがみられます。

例えば、会話のやり取りが一方通行になりやすい、相手の気持ちや意図を読み取りにくい、場面に応じた距離感をとることが苦手である、といった特徴があります。

B.行動や興味、感覚の面で偏りがみられます。

例えば、同じやり方に強くこだわる、予定変更がとても苦手である、興味のあることには非常に集中する、音や光やにおいなどに過敏または鈍感である、などがあります。

C.こうした特徴は子どもの頃から存在しており、学校生活、仕事、家庭生活、対人関係などに支障が出ています。

D.他の発達の問題や精神疾患、身体疾患だけでは十分に説明できません。

自閉スペクトラム症(ASD)の症状は?

「人づきあいが苦手」「こだわりが強い」という形で気づかれることが多い

自閉スペクトラム症(ASD)は、対人コミュニケーションの特性と、こだわりや感覚の特性が中心となる状態です。子どもの頃からみられることが多いですが、大人になってから仕事や人間関係の困りごとをきっかけに気づく方も少なくありません。

よくみられる特徴としては、以下のようなものがあります。

  1. 相手の表情や言外の意味を読み取ることが苦手
  2. 雑談やあいまいな会話が苦手
  3. 興味のあることには非常に集中できるが、興味のないことは負担になりやすい
  4. 予定変更や想定外の出来事に強いストレスを感じやすい
  5. 音、光、におい、肌ざわりなどの感覚に敏感である、または鈍い

また、自閉スペクトラム症(ASD)の方は、周囲に合わせようと無理をして疲れ切ってしまうことがあります。その結果として、不安症状、抑うつ、不眠、適応障害などの二次的な症状が出ることもあります。

自閉スペクトラム症(ASD)の原因は?

  • 生まれつきの脳機能の特性が関係していると考えられている
  • 遺伝的な要因を含む複数の要因が関わると考えられている
  • 本人の性格や育て方だけで起こるものではない

自閉スペクトラム症(ASD)は、親の育て方や本人の努力不足によって起こるものではありません。脳の情報処理の仕方に特性があると考えられており、そのため対人関係や感覚、こだわりの出方に独特の傾向がみられます。

一方で、同じ自閉スペクトラム症(ASD)でも困りごとの現れ方は人それぞれです。周囲の理解が得られやすい環境では大きな問題になりにくいこともありますが、逆に曖昧な指示が多い職場や対人負荷の高い環境では、困りごとが強く表面化することがあります。

自閉スペクトラム症(ASD)の注意点など

  • 本人の努力不足やわがままと誤解されやすい
  • うつ病、不安症、不眠などを合併することがある
  • 得意なことと苦手なことの差が大きいことがある

自閉スペクトラム症(ASD)の方は、出来ることは非常によく出来る一方で、苦手なことは大変苦労することがあります。そのため、周囲から「出来るのになぜ他は出来ないのか」と誤解されやすい傾向があります。

また、子どもの頃から何となく生きづらさを感じていても、それを言葉に出来ずに過ごしてきた方もおられます。大人になってから職場や家庭で困りごとが増え、初めて受診につながることも少なくありません。

大切なのは、診断名そのものよりも、どういう場面で困るのか、どういう工夫があれば生活しやすくなるのかを整理していくことです。

自閉スペクトラム症(ASD)の治療は?

特性理解と環境調整を中心に

二次障害にも対応を

  • 心理教育
  • 環境調整
  • 精神療法
  • 薬物療法

自閉スペクトラム症(ASD)そのものを薬で治すというよりは、まず本人が自分の特性を理解し、困りごとを整理していくことが大切です。これを心理教育といいます。

そのうえで、仕事や学校、家庭などの環境を調整していきます。例えば、口頭だけでなく文章で指示をもらう、予定変更を早めに伝える、感覚的につらい刺激を減らす、休息の取り方を工夫する、といったことが有効です。

また、自閉スペクトラム症(ASD)の方では、不安、不眠、抑うつ、強い緊張などが出ることがあります。その場合には、精神療法や薬物療法を併用することがあります。

「周囲に合わせられるように無理をする」ことを目標にするのではなく、「自分の特性を踏まえて生活しやすくする」ことが治療では大切になります。

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