はたらく人・学生のメンタルクリニック

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症状・障害

注意欠如多動症(児童)

注意欠如多動症(児童)を具体的な例を交えて詳しくご説明します。

注意欠如多動症(児童)の患者さんの例

  • Aさん 9歳 男児 小学3年生

    Aさんは9歳の男の子です。小学校に入ってから、忘れ物やなくし物が多く、宿題をやっていても提出し忘れることがよくありました。授業中も気が散りやすく、先生の説明を最後まで聞いていないように見えることがありました。

    また、思いついたことをすぐ口に出してしまい、友達の話を途中で遮ってしまうこともありました。順番を待つことが苦手で、遊びの中でトラブルになることもありました。本人は悪気があるわけではありませんが、学校でも家でも叱られることが増え、「どうせ僕は怒られる」と言うようになりました。

    ご家族は、最初は「しつけの問題なのではないか」「本人がやる気を出せば変わるのではないか」と考えていました。しかし、何度注意しても同じようなミスが続き、Aさん自身も自信をなくしていきました。担任の先生からも、学習面よりも生活面の困りごとについて相談があり、児童精神科を受診しました。

    診察では、不注意、多動性、衝動性が学校と家庭の両方でみられ、注意欠如多動症(ADHD)の特性が考えられました。Aさんには、「わざとやっているのではなく、注意を向け続けたり、行動を止めたりすることが苦手な特性がある」と説明しました。

    その後は、宿題や持ち物をチェックリストにする、指示を短く具体的にする、席の位置を調整する、出来た行動をその場でほめる、休憩をはさみながら課題に取り組むなどの工夫を行いました。必要に応じて薬物療法も検討し、Aさんは少しずつ叱られる場面が減り、自信を取り戻していきました。

注意欠如多動症(児童)の診断基準の要約

A.不注意、または多動性・衝動性の症状が、発達年齢に比べて強くみられます。

不注意の例としては、以下のようなものがあります。

  1. 細かいところを見落としやすい
  2. 注意を続けることが苦手
  3. 話を聞いていないように見える
  4. 指示を最後までやり遂げることが難しい
  5. 物事を順序立てることが苦手
  6. 宿題や課題を避けたがる
  7. 物をなくしやすい
  8. 気が散りやすい
  9. 忘れっぽい

多動性・衝動性の例としては、以下のようなものがあります。

  1. じっと座っていることが苦手
  2. 席を離れてしまう
  3. 走り回ったり高いところに登ったりする
  4. 静かに遊ぶことが苦手
  5. いつも動いているように見える
  6. おしゃべりが多い
  7. 質問が終わる前に答えてしまう
  8. 順番を待つことが苦手
  9. 他の人の邪魔をしてしまう

B.いくつかの症状は12歳以前からみられています。

C.症状は学校だけ、家庭だけではなく、複数の場面でみられます。

D.そのために、学校生活、家庭生活、友人関係などに支障が出ています。

E.他の精神疾患や身体疾患だけでは十分に説明できません。

注意欠如多動症(児童)の症状は?

「忘れ物が多い」「落ち着きがない」「待てない」という形で気づかれることが多い

注意欠如多動症(ADHD)は、不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達特性です。お子さんによって、不注意が目立つ場合、多動性・衝動性が目立つ場合、その両方がみられる場合があります。

よくみられる困りごととしては、以下のようなものがあります。

  • 宿題をやったのに出し忘れる
  • 鉛筆、消しゴム、プリントなどをよくなくす
  • 授業中に別のことを考えてしまう
  • 片づけや準備が苦手
  • 何度注意されても同じミスを繰り返す
  • 思いついたことをすぐ言ってしまう
  • 友達の遊びに割り込んでしまう
  • 感情が高ぶると止まりにくい

ADHDのお子さんは、本人なりには頑張っているのに、結果として叱られることが多くなりやすいです。そのため、自己評価が下がり、「自分はどうせ出来ない」と思ってしまうことがあります。

注意欠如多動症(児童)の 原因は?

  • 生まれつきの脳機能の特性が関係していると考えられている
  • 遺伝的な要因を含む複数の要因が関わる
  • しつけ不足や本人のやる気の問題だけではない

ADHDは、注意を向け続けること、行動を調整すること、衝動を抑えることに関係する脳機能の特性が背景にあると考えられています。育て方が悪いから起こるものではありません。

ただし、環境によって困りごとの出方は変わります。口頭で長く説明される、持ち物が多い、予定が複雑である、叱られることが多い環境では、症状が目立ちやすくなります。反対に、やることが見える化され、短い単位で取り組める環境では、力を発揮しやすくなることがあります。

注意欠如多動症(児童)の注意点など

  • 叱られる経験が積み重なりやすい
  • 学習症、自閉症スペクトラム、不安、抑うつなどを合併することがある
  • 女の子では不注意が中心で、気づかれにくいことがある

ADHDのお子さんは、悪気がないのに失敗が目立つため、周囲から「ちゃんとしなさい」「何度言えば分かるの」と言われ続けることがあります。しかし、注意だけで改善しようとすると、本人の自信が失われ、二次的に不安や抑うつが出ることがあります。

また、不注意が中心のお子さんでは、目立った多動がないため、単に「ぼんやりしている」「やる気がない」と誤解されることがあります。特に女の子では、表面上は大きな問題に見えず、本人だけが強く困っていることもあります。

大切なのは、叱る回数を増やすことではなく、失敗しにくい仕組みを作り、出来た行動を増やしていくことです。

注意欠如多動症(児童)の治療は?

環境調整と行動面の工夫を中心に
必要に応じて薬物療法を組み合わせます

  • 心理教育
  • 環境調整
  • 行動療法
  • ペアレントトレーニング
  • 学校との連携
  • 薬物療法

ADHDの治療では、まず本人とご家族が特性を理解することが大切です。「なぜ同じ失敗を繰り返すのか」「どうすれば失敗しにくくなるのか」を一緒に考えていきます。

環境調整としては、持ち物リストを作る、指示を短くする、やることを一つずつ伝える、集中する時間を短めに区切る、席の位置を調整する、刺激を減らす、といった工夫があります。

行動面では、出来ていないことを叱るだけではなく、出来た行動をすぐにほめることが重要です。保護者が対応方法を学ぶペアレントトレーニングが役立つこともあります。

薬物療法は、自転車で言うと補助輪のようなものです。薬だけで全てが解決するわけではありませんが、注意の向けやすさや衝動の抑えやすさを助け、生活上の工夫を身につけやすくすることがあります。効果と副作用を確認しながら、必要性を慎重に判断していきます。

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