選択性緘黙(児童)を具体的な例を交えて詳しくご説明します。
選択性緘黙(児童)の患者さんの例
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Aさん 6歳 女性 小学1年生
Aさんは6歳の女の子です。家ではよく話し、好きなアニメの話をしたり、きょうだいと大きな声で遊んだりしていました。しかし、幼稚園の頃から園ではほとんど話さず、先生から質問されても黙ってうなずく程度でした。
小学校に入ってからも、教室では声が出ませんでした。出席確認で返事が出来ず、トイレに行きたいときも先生に言えずに我慢してしまうことがありました。友達と遊びたい気持ちはあるものの、自分から声をかけられず、休み時間は一人で過ごすことが多くなりました。
ご家族は「恥ずかしがり屋なのだろう」と思っていましたが、学校で全く話せない状態が続き、本人も登校前に緊張して表情が硬くなるようになりました。担任の先生からも相談があり、児童精神科を受診しました。
診察では、家庭では話せるにもかかわらず、学校など特定の場面で一貫して話すことが出来ない状態が続いており、選択性緘黙が考えられました。Aさんは「話したくない」のではなく、「話そうとすると体が固まって声が出ない」と感じているようでした。
その後は、学校で無理に発表させることを避け、まずはうなずき、指差し、カード、筆談などで意思を伝えられるようにしました。安心できる先生と一対一の場面で小さな声を出す練習をし、次に友達が一人いる場面、少人数の場面へと少しずつ広げていきました。Aさんは少しずつ「話せた」という経験を積み、学校での緊張が和らいでいきました。
選択性緘黙(児童)の診断基準の要約
A.他の状況では話しているにもかかわらず、学校など、話すことが期待される特定の社会的状況で、一貫して話すことが出来ません。
B.そのために、学業、学校生活、対人コミュニケーションに支障が出ています。
C.その状態が少なくとも1か月以上続いています。
ただし、入学直後など、新しい環境に慣れる最初の1か月だけに限られる場合は除きます。
D.話せないことは、その場で使われる言葉の知識が不足していることだけでは説明できません。
E.コミュニケーション症、自閉症スペクトラム、統合失調症など、他の状態だけでは十分に説明できません。
選択性緘黙(児童)の症状は?
「話さない」のではなく
「話そうとしても声が出ない」状態です
選択性緘黙は、家庭では普通に話せるのに、学校や園など特定の場面では話すことが出来なくなる状態です。「選択性」という言葉から、本人がわざと話さないように誤解されることがありますが、実際には強い不安や緊張のために声が出ない状態です。
よくみられる症状としては、以下のようなものがあります。
- 家では話すのに、学校では話せない
- 先生に質問されても返事が出来ない
- 発表、音読、挨拶が出来ない
- トイレや体調不良を言えずに困る
- 表情や体の動きも固まることがある
- 友達と遊びたいのに声をかけられない
- 学校に行く前に強い緊張が出る
選択性緘黙のお子さんは、問題行動が少ないため、周囲から見過ごされやすい傾向があります。しかし、本人は強い緊張や不安を感じており、学校生活の中で困っていることが多くあります。
選択性緘黙(児童)の原因は?
- 不安になりやすい気質が関係していることが多い
- 人前で話すことへの強い緊張や自信のなさが関係することがある
- 自閉症スペクトラムや言語面の課題を伴うこともある
選択性緘黙は、本人が反抗している、わざと黙っているというものではありません。強い不安や緊張が背景にあり、話そうとすると体が固まってしまう状態と考えると理解しやすいと思います。
また、環境の変化に慣れるのに時間がかかるお子さん、対人場面で緊張しやすいお子さん、言葉で説明することに自信がないお子さんにみられることがあります。自閉症スペクトラムや言語発達の課題が併存する場合もあるため、必要に応じて発達全体を評価することが大切です。
選択性緘黙(児童)の注意点など
- 「話しなさい」と強く促すと悪化することがある
- 静かで困らせないため、見過ごされやすい
- 発話だけを急がせず、安心して伝えられる方法を増やすことが大切
選択性緘黙のお子さんに、人前で急に発表させたり、「挨拶しなさい」「どうして話さないの」と問い詰めたりすると、不安が強まり、さらに話しにくくなることがあります。
まずは、話せない場面でも安心して過ごせる環境を作ることが大切です。うなずき、指差し、カード、筆談など、声以外の方法で意思を伝えられるようにすることは、決して甘やかしではありません。コミュニケーションの成功体験を積むために重要な工夫です。
また、「家では話せるから大丈夫」と考えて放置すると、学校生活での困りごとが長引くことがあります。早めに周囲が理解し、無理のない段階的な支援を行うことが大切です。
選択性緘黙(児童)の治療は?
無理に話させるのではなく
安心できる場面から少しずつ広げていく
- 心理教育
- 環境調整
- 代替コミュニケーションの活用
- 段階的な発話練習
- 学校との連携
- 必要に応じた不安への治療
治療では、まずご家族や学校が、選択性緘黙は「話さない」のではなく「話せない」状態であることを理解することが大切です。
学校では、いきなりみんなの前で話すことを目標にするのではなく、安心できる先生との一対一の場面、誰もいない教室、少人数の場面など、緊張が少ない場面から少しずつ練習します。声を出す前に、うなずき、指差し、カード、筆談などで伝える経験を増やすことも大切です。
お子さんが前向きに取り組める場合には、言語療法や心理療法が役立つことがあります。不安が非常に強い場合や、社交不安、登校しぶり、抑うつなどを伴う場合には、それらに対する治療を併用することもあります。
治療の目標は、無理に早く話させることではありません。お子さんが安心して人と関わり、自分の意思を伝えられる方法を増やしていくことが大切です。
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