自閉症スペクトラム(児童)を具体的な例を交えて詳しくご説明します。
自閉症スペクトラム(児童)の患者さんの例
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Aさん 8歳 男児 小学2年生
Aさんは8歳の男の子です。幼稚園の頃から、他の子どもと一緒に遊ぶよりも、自分の好きな電車や数字のことを一人で調べたり、並べたりして遊ぶことが多いお子さんでした。言葉の発達が特別に遅いわけではありませんでしたが、会話をしていると自分の好きな話を一方的に続けてしまい、相手が困っていることに気づきにくいところがありました。
小学校に入ってから、困りごとが目立つようになりました。授業中に予定が急に変わると強く混乱してしまい、泣き出したり、教室から出ていってしまうことがありました。給食では特定の食感のものがどうしても食べられず、運動会の練習では大きな音や人の多さで疲れ切ってしまいました。友達から冗談を言われても、その意味が分からず本気に受け取ってしまい、トラブルになることもありました。
ご家族は最初、「わがままなのではないか」「集団生活に慣れれば良くなるのではないか」と考えていました。しかし、Aさん自身も学校から帰るとぐったりしており、夜に眠れなくなったり、「学校に行きたくない」と言うことが増えてきました。担任の先生からも、集団生活での困りごとについて相談があり、児童精神科を受診しました。
診察では、幼少期からの対人コミュニケーションの苦手さ、予定変更への弱さ、感覚の過敏さ、興味の偏りなどを整理し、自閉症スペクトラムの特性が背景にあると考えられました。Aさんは「怒られることが多い自分は悪い子なのではないか」と思っていましたが、特性として理解することで、ご家族も学校も関わり方を見直すことが出来るようになりました。
その後は、学校で1日の予定を見える形で示してもらう、急な変更は早めに伝えてもらう、苦手な音が強い場面では休める場所を用意する、友達とのやり取りを具体的に練習するなどの工夫を行いました。Aさんは少しずつ安心して学校で過ごせる時間が増え、得意なことを活かしながら生活出来るようになってきました。
自閉症スペクトラム(児童)の診断基準の要約
A.対人関係やコミュニケーションにおいて、持続的な苦手さがみられます。
例えば、相手の気持ちや意図を読み取りにくい、会話のやり取りが一方通行になりやすい、友達との距離感をとることが苦手である、といった特徴があります。
B.行動、興味、感覚の面で偏りがみられます。
例えば、同じやり方に強くこだわる、予定変更がとても苦手である、特定のものに強い興味を持つ、音や光やにおいなどの感覚に敏感である、または鈍感である、などがあります。
C.こうした特徴は子どもの頃から存在しています。
ただし、幼少期には目立たず、小学校に入って集団生活や対人関係が複雑になってから困りごととして表面化することもあります。
D.学校生活、家庭生活、対人関係などに支障が出ています。
E.知的発達の問題、言葉の発達の問題、他の精神疾患だけでは十分に説明できません。
自閉症スペクトラム(児童)の症状は?
「人とのやり取りが苦手」「こだわりが強い」という形で気づかれることが多い
自閉症スペクトラムの症状は、お子さんによってかなり違います。言葉が遅いことで幼児期に気づかれる場合もあれば、言葉はよく話すものの、会話のやり取りや友達関係の難しさで小学校に入ってから気づかれる場合もあります。
よくみられる特徴としては、以下のようなものがあります。
- 相手の表情や言外の意味を読み取ることが苦手
- 友達との遊びのルールや暗黙の了解が分かりにくい
- 自分の好きな話を一方的に続けてしまう
- 予定変更や初めての場面に強い不安を感じやすい
- 音、光、におい、服の肌ざわり、食感などに敏感である
- 特定のものや遊びに強くこだわる
- 集団生活のあとに非常に疲れやすい
また、自閉症スペクトラムのお子さんは、本人なりに一生懸命まわりに合わせようとしていることがあります。そのため、学校では頑張っているものの、家に帰ってから癇癪が出たり、疲れ切って何も出来なくなったりすることもあります。
自閉症スペクトラム(児童)の原因は?
- 生まれつきの脳機能の特性が関係していると考えられている
- 遺伝的な要因を含む複数の要因が関わると考えられている
- 親の育て方や本人の努力不足で起こるものではない
自閉症スペクトラムは、親の育て方やしつけの問題で起こるものではありません。脳の情報処理の仕方に特性があり、そのために人とのやり取り、感覚、こだわり、見通しの立て方などに独特の傾向が出ると考えられています。
同じ自閉症スペクトラムでも、困りごとの出方は一人ひとり違います。家庭ではあまり困っていなくても、学校のように集団行動や予定変更が多い場所では困りごとが目立つこともあります。反対に、環境が合っていると落ち着いて過ごせることも多くあります。
自閉症スペクトラム(児童)の注意点など
- 本人のわがままや努力不足と誤解されやすい
- 不安、抑うつ、不眠、不登校などの二次的な問題が出ることがある
- 得意なことと苦手なことの差が大きいことがある
自閉症スペクトラムのお子さんは、出来ることはとてもよく出来る一方で、苦手なことは非常に苦労することがあります。そのため、「これが出来るのに、なぜこれは出来ないのか」と誤解されやすい傾向があります。
また、本人が困っていることをうまく言葉に出来ないこともあります。怒っているように見えたり、反抗しているように見えたりしても、実際には不安や混乱が強く、どうしてよいか分からなくなっていることがあります。
大切なのは、診断名をつけること自体ではなく、そのお子さんがどの場面で困りやすいのか、どういう伝え方や環境で安心しやすいのかを整理していくことです。
自閉症スペクトラム(児童)の治療は?
特性理解と環境調整を中心に
お子さんが安心して過ごせる方法を考える
- 心理教育
- 環境調整
- 療育・ソーシャルスキルの練習
- ご家族や学校との連携
- 必要に応じた薬物療法
自閉症スペクトラムそのものを薬で治すというよりは、まずお子さんの特性を理解し、困りごとを整理していくことが大切です。これを心理教育といいます。
そのうえで、学校や家庭での環境調整を行います。例えば、予定を見える形で伝える、指示は短く具体的にする、急な変更を少なくする、感覚的につらい刺激を減らす、休める場所を用意する、といった工夫があります。
また、友達との関わり方、困ったときの伝え方、気持ちの整理の仕方などを練習していくこともあります。不安、不眠、気分の落ち込み、強い癇癪などがある場合には、それぞれの症状に応じて精神療法や薬物療法を併用することがあります。
「普通に合わせる」ことを目標にするのではなく、「その子の特性を踏まえて、生活しやすくする」ことが治療では大切になります。
大阪府では夜間・休日に、精神疾患を有する方やその御家族様などから、緊急時にお電話いただければ、必要に応じて精神科救急医療機関の利用についてご案内するというシステムがあります。
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